今回の課題では,gnuplot を使います. 以前の作業 でインストール済みのはずですが,インストールをやり直す必要があるかもしれません. takataka に相談してください.
次のような関数 \( s(x) \) を考える.これはシグモイド関数と呼ばれるものの一つの形である.
gnuplot でこの関数のグラフを描いてみよう.参考: wiki:Docs/gnuplot
$ gnuplot gnuplot> s(x) = 1.0/(1+exp(-x)) gnuplot> plot s(x)
式の形とこの結果を元に,次の問に答えなさい.
次に,\( a, b, c \) を定数として,\( z = s(ax+by+c) \) とおいてみる.(x,y,z)の3次元空間にこの曲面を描いて眺めよう.マウスでで3次元グラフをぐりぐり回したりズームしたりできるはず.
gnuplot> z(x, y, a, b, c) = s( a*x + b*y + c ) gnuplot> splot z(x,y,1,0,2) gnuplot> splot z(x,y,1,0,-2) gnuplot> splot z(x,y,1,1,-2) gnuplot> splot z(x,y,1,-1,-2)
ぐりぐりできない場合は,デフォルトの描画環境が対応してないのかもしれない.
gnuplot> set terminal qt 出力先を Qt に変更 gnuplot> replot 再描画.これでぐりぐりできるかも
上記でうまくいかない場合は,次を試してみよう
gnuplot> set terminal x11 出力先を X11 に変更. gnuplot> replot 再描画.これでぐりぐりできるかも
\( z = s(x) \) の導関数 \( \frac{dz}{dx} \) を求めよう.求めた式をながめていると,\( z \) 自身を使うと簡潔に
という形に表すことができることに気づく.hoge の部分には,\( z \) を使った式が入る.これを求めなさい.
\( X = ax+by+c \) とおくと,高校で習った合成関数の微分を思い出すと,
である.これと↑の結果を用いて,\( z \) の \( a \) に関する微分, \( b \) に関する微分,\( c \) に関する微分をそれぞれ,\( z,a,b,c,x,y \)を用いた式で表しなさい.
\( t \) を定数として,
とおく.\( \frac{\partial h}{\partial a} \),同 b, c を↑と同様に式で表しなさい.
次の課題を待て
以下を読んで理解しなさい.
\( D \)次元特徴ベクトルで与えられるデータを「ほげクラス」に属するものとそれ以外(「ほげじゃないもののクラス」)に分類する問題(すなわち2クラスの識別問題)を考える.以下では簡単のため,\( D = 2 \) の場合に限定する.
ある2次元データを \( \bm{x} = (x, y) \) とする.このとき,先の課題で登場した \( z = s(ax+by+c) \) という式の値によって,データ \( \bm{x} \) が「ほげクラス」に属する確率を推定することにしよう(このようなモデルをロジスティック回帰モデルという).パラメータ \( a, b, c \) を調節するとこの推定確率が変化するので,クラス既知の学習データを用いてこれらのパラメータを学習させる.
学習データとして,\( N \)個の特徴ベクトル \( \bm{x}_1, \bm{x}_2, \dots , \bm{x}_{N} \) (\( \bm{x}_n = (x_n,y_n) \))と,それぞれの所属クラスを表す教師信号 \( t_1, t_2, \dots , t_N \) ( \( \bm{x}_n \) が ほげクラスなら \( t_n = 1 \),さもなくば \( t_n = 0 \) )を用意する.この学習データに対して,\( z_n = s(ax_n+by_n+c) \) が正解 \( t_n \) に近づくようにパラメータ \( a,b,c \) を決定したい.そこで,\( z_n \) の正解との近さの規準として
というものを考える.今の問題では \( t_n \) が 0 か 1 であるから,式の形から,\( t_n = 0 \) ならば \( z_n \) が小さい(0に近い)ほど \( h_n \) が小さくなり,\( t_n = 1 \) ならば逆に\( z_n \) が大きい(1に近い)ほど \( h_n \) が小さくなることがわかる.全ての学習データに対する \( h_n \) の和を \( H \) と表すことにする.つまり
である.この \( H \) を最小化するようにパラメータ \( a,b,c \) を決めれば,学習データをうまく2クラスに分類できるだろう.これが,ロジスティック回帰による2クラス識別の考え方である.なんでシグモイドかとかなんで \( H \) という式(これを交差エントロピーという)を考えるのかとかは省略.
\( H \) を最小にするパラメータ \( a,b,c \) を求める問題は非線形最適化問題なので,一撃で解を求めることは一般に不可能である.このような最適化問題の解法はたくさんあるが,今の場合は目的関数(最小化したい関数)が微分できるので,目的関数の微分すなわち勾配を利用する「勾配法」がよく用いられる.これは,パラメータを適当な初期値に設定した状態からスタートして,\( H \) の微係数の値を調べながら,\( H \) が小さくなる方向に徐々にパラメータを変化させていく方法である.
いまの学習の目的は \( H \) の最小化だから,本来は上記のように \( H \) の勾配を調べてパラメータを修正するべきだが,そのような方法には多少問題がある(ここでは詳しく述べないが,学習の進め方の微調整が必要とか,コンピュータによる計算の効率がよくないとか).実際には,\( H \) の勾配を調べてパラメータを修正するかわりに,\( h_n \) の勾配を用いて個々の学習データごとにパラメータを修正することを繰り返すことで,確率的に \( H \) が最小化されることを期待する,というアプローチをとることがある.このような方法を,確率的勾配降下法(Stochastic Gradient Desecent, SGD)という.
\( h_n \) のパラメータ \( \theta \) に対する偏微係数 \( \frac{\partial h_n}{\partial \theta} \)(\( \theta \) は \( a,b,c \)を表す)は,先の課題で得た式で計算できる.このとき,SGDによる学習の手順は次のようになる.
\( \frac{\partial h_n}{\partial \theta} \) は現在のパラメータ値の地点における \( h_n \) の傾きであるから,このようにすると,\( h_n \) が少し小さくなる(下る)方向にパラメータを修正することになる.このような計算を何度も繰り返すと,やがて学習データ全体の交差エントロピーを小さくするようなパラメータにたどりつく( \( H \) を最小にするパラメータにたどり着く保証はないけれども,準最適なパラメータを見つけることができる)だろう.これが,(ロジスティック回帰モデルの)SGDによる学習の手順である.